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塗料で人を幸せにする

18中計初年度の総括: 試練の中で再確認した「原点」

第18次中期経営計画(18中計)の初年度を終え、2年目のスタートラインに立った今、私の心にあるのは、業績への手応え以上に、全てのステークホルダーに対する深い感謝の念です。18中計の幕開けとなったこの1年、世界各国ですでに多くの進展があると同時に、挑戦の過程における苦難とも戦っています。本年1月に日本国内における基幹システム(ERP※1)の刷新という、グループ最大級の難事への挑戦を始めました。ERP導入自体は成功をしましたが、周辺の既存システムとの連携において想定外の混乱が生じました。製品の供給や物流において、お客様、販売店様、サプライヤー様、そして物流パートナーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしました。この場をお借りして、あらためて深くお詫び申し上げますとともに支えてくださる皆様へ感謝申し上げます。

この中で私が見たものは、関西ペイントという企業の「真の姿」でした。不測の事態に対し、自らの業務を超えて現場に駆けつけ、解決のために奔走した社員たち。そして何より、今こそ関西ペイントを支える時である、ともに乗り越えようと、私たちを励まし、支えてくださったパートナー企業の皆様。この危機を通じて再確認したのは、私たちの事業は、単なる塗料の製造販売ではなく、ステークホルダーの皆様との強固な「信頼の絆」の上に成り立っているという事実でした。

販売店様や物流会社の皆様が、私たちが困っているところをカバーするために自らのリソースを割いてくださったこと、サプライヤー様が供給の維持に尽力してくださったことをはじめ、全ての支えがあって、私たちはこの導入期の混乱を乗り越えることができます。この姿こそ、組織の壁を溶かし、私が理想としてきた「ONE KANSAI」という理念であり、名実ともに社会に実装された一つの形であると確信しています。この試練を経て、私たちの結束は以前よりも遥かに強固なものとなることを確信しています。

※1 ERP(Enterprise Resources Planning):統合基幹業務システム


グローバル四極体制の躍進:並列する成長エンジン

日本セグメントが内なる変革という試練に挑む一方、グローバル各域は18中計の戦略を力強く加速させ、グループ全体の業績を牽引、または変革を開始しました。もはや「日本が海外を支える」のではなく、世界四極が対等なパートナーとして並列し、互いに知見を共有するダイナミックなポートフォリオが完成しています。

特に、2025年度に立ち上げた、日本、インド、欧州、アフリカのトップがグローバル課題の解決に取り組む「4 Party Meeting」が期待以上の成果を上げ、ONE KANSAIの実現に向けた活動が大きく進んでいます。


日本 ERP導入を踏まえたDXとグループリーダーシップの発揮

先述したとおり、当社は40年前から使ってきた基幹システムを最新のERPに刷新しました。過去、何度もレガシーシステムの刷新は計画されましたが、毎回先延ばしにされてきました。この「負の遺産」を将来への財産に変えることは私の社長としての使命であり、宿願でありました。

何よりも旧基幹システムが故障や攻撃を受けた場合、復旧できる人材がいない、という大きなリスクをなくすことは、当社の供給責任を守り抜くために、避けては通れない経営判断でした。そして、この変革を断行したことで今後数十年にわたるレジリエンスとデータ経営の基盤を手にしました。

また、18中計で開始した人材への投資の目玉である「デジタル・リーダーシップ・アカデミー(DLA)100」の1期生が1年間の厳しい修練を終えました。今後は最新鋭のERPを軸に当社グループをデータでつなぐ、グローバル・デジタル・プラットフォーム(GDP)の第2世代の開発に取り組みます。ここから先は弱みであったITを強みに変え、当社グループの本社機能として、グループ成長を牽引していくリーダーシップを発揮していきます。


インド 規律ある成長の継続

インド市場は依然として力強い成長を続けていますが、当社は規模の拡大にとどまることなく、次の成長を見据えています。投資判断の透明性を徹底し、成長を維持しながら利益の質を高める「安定的な持続的成長」を実現するために自動車用塗料、工業用塗料、建築用塗料の3事業を柱としてインド市場で唯一無二の存在感を高めています。
特に、シェア60%を超える自動車用では、自動車生産において、旺盛な国内需要に加え、インドが自動車輸出国になってきたこともあり、いよいよ本格的な成長が始まりました。当社は自動車のみならず、 2輪、3輪、EVとモビリティをフルカバーしているため、圧倒的な優位性を獲得しています。現在は最高峰の自動車塗料技術を背景に工業分野に注力しており、急速に成長しています。当社はこの勢いのある市場の中で質の高い事業にすべく、取捨選択をしながら確実な成長を続けています。そして、競争が激化している建築用では、当社の強みに特化する差別化戦略を進め、新規参入メーカーを核とするシェアの奪い合いとは一線を画したポジションを確立しつつあります。
さらに、ONE KANSAIの視点から、建設化学品の欧州、アフリカへの展開に着手するなど、グループのリーダーの一角として素晴らしい活躍を始めました。

欧州 構造改革「True Color」の実行

欧州事業では、抜本的な構造改革プロジェクト「True Color」が1月にスタートしました。高収益事業に集中するための取捨選択、生産工場の最適化を進め、2年後にはEBITDAマージン15%を達成し、2030年には同マージンを18%まで引き上げる野心的な計画です。これらの構造改革を2年で完遂することは当社グループの現段階における最重要、かつ、最後の大きな挑戦です。私たちはTrue Color成功の先の、当社グループの次のステージを見据え、この大プロジェクトに挑みます。

また、WEILBURGER事業の主力である鉄道用塗料のグローバル展開に向けた取り組みや、Non-Stick技術を、日本を含む世界各国へ展開していく活動も積極的に推し進めており、技術の発信基地としての独自性を発揮し始めています。事業成長については、まず、世界最強と自負する自動車用塗料分野をより強化します。他塗料メーカーでは「儲からない」と言われている分野であり、グローバルに供給体制を持つ塗料メーカーは当社を含めて世界に5社しかありません。当社はその中でも最も成功している企業であり、この強みを研ぎ澄ませて、EV、自動車部品やオートバイをはじめ、ドメインを車からモビリティに拡大し、自動車産業に訪れている大変革期を飛躍のチャンスに変えます。そして、自動車分野での成功モデルを工業用へと広げます。手始めに鉄道用塗料、建機・農機用塗料を事業部として独立させ、自動車と同様のグローバル組織に改編します。リード役は欧州のKansai Helios Coatings GmbHで、自動車以外でグローバルビジネスに挑戦することやリーダーが日本ではないことも含めて初の挑戦であり、非常に楽しみです。自動車や工業のようにグローバル化すべき事業と、各国で地域に根差して進めるべき事業をそれぞれの特性に合わせて適切に戦術化します。


アフリカ 構造改革、新興市場の先駆者としての躍進
アフリカでは、構造改革を見事に成功させて長年の赤字から脱し、いまや、グループでもトップクラスの収益性をはじき出しています。さらに個別最適化していた南アフリカと東アフリカの融合、統合を強力に進めています。ある意味、当社の目指す姿を最も早く実行、実現している地域となりました。外部環境としては、2050年には、アフリカ人口が世界人口の約4分の1に達する※という人口ボーナスを土台として、インドに次ぐ世界最大の成長地域です。この大きな可能性を見据え、当社グループでは盤石な体制を構築し、展開地域の拡大への挑戦を始めました。アフリカ大陸での当社グループは、すでに圧倒的No.1の地位を確立していますが、展開地域は現時点では限定的です。将来、本格的にアフリカ経済が発展する前に地域に根差した足場を固めるとても重要な時期と考えています。

また、今年から始まった欧州の構造改革、True Colorプロジェクトへの支援も大きな役割です。アフリカで成功させた構造改革の経験、知見を欧州チームに伝え、実際に支援していくことでTrue Colorの成功確率を高めることができます。

業績面でも今年度、EBITDAマージン18%到達を目指しており、当社グループへの貢献度が急速に高まっています。

※出典: United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division.

人的資本経営: 1万7,000人の「意志」がシナジーを生む

18中計の最大の推進力は「人」です。ERP導入の試練を乗り越えるのも、グローバルで成長を牽引するのも、現場の社員一人一人の「意志」にほかなりません。
私は人的資本への投資を「最優先の成長投資」と位置づけ、グローバルでの人材交流と知見共有を強化しています。今年度から本格的にグローバル人事制度の設計に取り組み、18中計の期間中に実行できる体制を構築します。もちろん、この制度設計の完成を待つだけではなく、昨年度同様に、できることころから実行に移していきます。
組織面では、細分化されていた海外各地域事業を「アジア事業部門」「EMEA事業部門」に統合し、アジア事業部門長にはプラヴィ ン D. チャウダリ氏が、EMEA事業門にはプレジェイ R. ララ氏が就任し、シンプルかつ強力なガバナンスを確立します。そのうえで各地の有望、有力人材の最適配置をグローバル規模で進め、当社グループの潜在能力を表出させていきます。また、1年間の準備期間を経て本格的に立ち上げる「Rail・ACE事業部門」は、当社グループの将来を切り拓く可能性がある大きな挑戦です。これまで自動車塗料事業で成功してきた当社のビジネスモデルや強みを自動車以外のグローバル事業に展開します。この事業部門でも多国籍の人材がグローバルに活躍していく計画です。
そして、これらの人的資本の投資を実行していくことに不可欠なのが財務の力です。当社が目指す成長を支える強固な財務基盤と、資本市場への誠実なコミットメントについては冨岡CFOのメッセージで詳しく述べています。当社は攻守一体となってこの変革を断行します。

18中計 2年目の決意

当社は今、「日本発のグローバル企業」として脱皮をしているまさにその瞬間であります。真のグローバル企業に変貌するために全力で取り組んでいますが、18中計2年目の今年度はまさにその分岐点になると考えております。まさに変貌の瞬間を読者の皆様にお伝えしたく、今年の統合報告書を作成しています。ぜひありのままの当社の姿を感じていただき、当社の今後の飛躍にご期待いただきたいと思います。
結びとなりますが、挑戦には苦難や失敗がつきものです。私が全ての責任を負い、必ず前に進めてまいります。このような大きな変革期に最も大切なことは、ステークホルダーの皆様の支えがあってこそ、挑戦ができるという感謝の姿勢を全員が持つことだと考えています。
ステークホルダーの皆様から受けた恩義を、「持続可能な社会への貢献」と「圧倒的な企業価値の向上」という形でお返しすることをお約束し、私の決意表明とさせていただきます。

代表取締役社長