研究開発関西ペイントの提供価値
- 塗料は『流動体』を『塗る』という方法を通じて、物体に特殊な表面機能を付与する製品です。
「基盤技術」「要素技術」を通じて当社がソリューション提供できる技術課題・コンセプトについてご紹介します。
当社は、お客さまと共に社会発展性の高い価値を提供していきます。
提供価値
建築物は絶えず微細に振動しており、意匠や保護を目的に塗装された塗膜もその振動の影響を受けます。そのため、建築外装用塗料は自動車などの塗膜に比べると柔らかく設計されていますが、その相反として防汚性が不足します。複合形超低汚染 高耐候性アクリルシリコン樹脂塗料は、当社の樹脂合成技術により、振動による塗膜のワレや剥がれなどを起こすことなく、塗膜の硬さを向上させるモノマー組成で構成されたアクリルシリコンエマルションを用い、従来よりも優れた低汚染性を発揮できる塗料です。また、組成配合技術を駆使し、防カビ・防藻剤を配合することで一般的な汚れだけでなく、カビやコケなどによる汚染をも防ぐ複合形の低汚染塗料として使用されています。
火力、水力、原子力発電所では、ダム湖、河川あるいは海洋より取水した水を、そのままあるいは蒸気化して発電タービンを駆動します。より高い発電効率を得るためには、スムーズな導水が必要となることから、取水路壁面は限りなく綺麗であることが求められます。取水路壁面の汚れは、主に、藻類、貝類、あるいは藤壺のような昆虫類の付着なので、これらが付着しにくい塗装を取水路の接液面側に塗装します。
高分子シリコーンオイルをシリコーンレジンによる3次元架橋構造の中に閉じ込めることで、水中でシリコーンオイルを徐放する塗膜とすることができます。シリコーンオイルの低極性による撥水・撥油性との相乗作用により、長期間防汚することが可能となります。
船底防汚塗料は、加水分解するポリマーと生物忌避の防汚剤を主な塗料成分としています。その防汚メカニズムとして大きく2つの特徴があります。1つ目は、加水分解ポリマー(シリルポリマー)が、海水中で表面から均一に加水分解することで安定した塗膜更新を持続します。2つ目は、防汚剤として用いている亜酸化銅の分散性とレオロジーコントロール技術を融合することで、塗膜表面を平滑に保ちながら、亜酸化銅を溶出させ、海洋生物の付着を防ぎます。この塗膜更新性と優れた防汚性の基盤技術に加え、表面平滑性により船の運航時の海水抵抗を減らし、燃費向上に貢献しており、外航船や内航船で多くの実績を上げています。
- AF塗料用の加水分解ポリマーの海水中での変化
- 防汚剤の溶出での生物忌避メカニズム
- 実船での防汚効果
鉄構造物のLCC、LCA低減のためには、防食性の耐用年数およびメンテナンス周期の延長、易メンテナンス化が最も有効です。塗装膜厚の増大は、防食性の耐用年数の延長に最も効果的な手法の一つです。
酸素遮断性に優れるビスフェノール型エポキシ樹脂と反応性希釈剤からなる主剤と、高い反応性を有するアミン硬化剤を基本骨格とする、有効成分90%以上にもなる超ハイソリッド塗料は、1回で1mmを超える膜厚の塗布が可能です。港湾空港技術研究所との長期間にわたる共同研究では、メンテナンスフリーで35年*の防食性を維持しています。
* 港湾鋼構造物の防食・補修マニュアル(沿岸技術研究センター)
鉄構造物のLCC、LCA低減のためには、防食性の耐用年数およびメンテナンス周期の延長、易メンテナンス化が最も有効です。塗装時の錆落とし、素地調整の簡素化と長期防食性の両立は、これを達成する有効手段の一つです。
錆残存面では、3種の腐食電流を考慮し、これらを直接抑制する技術が有効です。酸素遮断性に優れる高分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂エマルション技術、不働態皮膜形成能に優れる防錆顔料技術、さらには脆弱かつ凹凸のある錆面での安定した塗膜形成技術により、錆残存面上での優れた防食性を達成することができました。本技術は、(公社)腐食防食学会にて技術賞を受賞し、NETIS*にも登録されました。
*NETIS登録番号 KK-220040-A
蚊は不快害虫としてだけでなく、感染症の媒介者でもあります。その感染症の1つであるマラリアは、WHOの報告によると2021年の1年間に約2億4700万人が感染し、推計61万9,000人が死亡しています。蚊の行動特性である【飛んでいる時間よりも壁や天井に止まっている時間が長い】に着目し、防蚊塗料が塗装された壁面に蚊が接触すると、塗膜中に含有されている薬剤が蚊の神経系へ影響し、忌避効果や吸血行動の消失効果を示します。防蚊塗料の重要な開発項目の1つに、塗膜からの薬剤徐放性があります。徐放量が少ないと効果不十分、多いと効果持続性に乏しくなるためです。適量の薬剤を徐放させるため、樹脂や顔料等の原材料選定、またその割合を見極め、適量の薬剤が塗膜表層に存在する配合を見出しました。
これが、塗料で感染から人の命を守る、当社の「Anti-Mosquito Paint」です。
「Anti-Mosquito Paint」は世界各国から強く注目されており、東南アジアやアフリカを中心に海外展開を行っています。もちろん人や動物の健康に影響がないかも確認しています。国際協力機構(JICA)を通じたザンビア共和国でのフィールドサーベイで効果を実証したり、アメリカ農務省(USDA)との共同研究を実施したりなど、さまざまな国際機関にもご協力いただき、世界の問題解決への貢献を目指しています。
耐火被覆材料は、火災時の熱によって鉄骨構造建築物が倒壊するのを防止するために鉄骨に断熱性を付与する材料である。国内ではロックウールに代表される無機繊維系被覆材料が主流であるが、外観品質や安全性に課題があり、海外では置き換えが進められている。耐火塗料はその代替材料の一つであり、平常時は薄い被膜でありながら、火災時にはその熱によって塗膜が膨張し、チャーと呼ばれる断熱層を形成する。無機繊維系材料と比較して平常時の外観品質に優れるため、デザイン性の要求される部位への適用事例が増加している。
耐火テクトは従来の耐火塗料とは全く異なる樹脂、架橋系を適用した2液耐火塗料である。従来品と同等以上の耐火性能を有し、屋外耐久性に優れ、施工期間は概ね1/2~1/3となる。従来同様の現場施工に加え、鉄鋼製作FABでのプレ施工にも対応する。その美観と省工程、耐久性が評価され、既に多くの建築物に採用されている。
屋根の表面に直射日光が当たると表面温度が上昇し、その熱量が建物内部にまで流入し、建物内部が暑くなります。屋根の表面温度上昇を抑制し、建物内部の温度上昇を防ぎ、冷房費の節約に貢献できるのが、当社のアレスクール塗料です。アレスクールは下塗と上塗のシステムで「Wブロック効果」により屋根の温度上昇を抑制します。太陽光エネルギーの実に半分が赤外線で、赤外線を如何に反射させるかがポイントですが、アレスクールは上塗に用いる着色顔料の光学特性を把握し、赤外線をある程度散乱させます。特に黒顔料は特殊な酸化物顔料を用いることで、黒色ながら赤外線を散乱させるものを用いています。上塗だけで散乱できなかった赤外線は更に特殊な酸化チタンを配合した下塗によって散乱させ、塗膜の赤外線吸収を抑制させます。こうしたWブロック効果により、屋根の表面温度を約14℃も抑制できることが示されています。
指先で表面をなでるように触って柔らかく感じる塗膜であり、さらさらといった「乾湿感」、すべすべといった「粗滑感」、温かいといった「温冷感」、軟らかいといった「硬軟感」の4つの感覚で評価することができます。またそれらの4つの感覚を数値化したものをソフトフィール値(下図の式)として評価することができます。
さらさらとした触感で絹のような仕上がりを付与したシルキータイプや、しっとりとした触感で、よりソフトでゴムのような質感を付与したラバータイプなどを設定しており、いずれも一般的な艶消し塗膜よりも高いソフトフィール値を表しています。
航空機、風力発電ブレード、風速計等各種計測器に雪や氷が付着すると空気抵抗が増大してエネルギーロスを生じる。道路標識、自動車フロントライト等に付着すると表面を覆ってしまい本来の機能が失われてしまう。薬剤散布や人力での除去などが実施されているが環境負荷や労力が大きく、コーティングによるメンテナンスレスを求める声は以前より根強い。
水の結晶である雪や氷の内部には水分子が水素結合によって整然と並んでおり、基材表面近傍の水分子と相互作用して付着する。この相互作用力を着氷力とすると着氷力を低下させるには相互作用する点を減らすことが効果的である。塗膜中の樹脂に束縛された水分子を生み出し、氷雪中の水分子の結合角に対して異なる状態とすることで、塗膜と雪や氷のミスマッチを引き起こす技術を検討している。この技術は塗膜が軟化するほど効果的であるが軟化した塗膜は汚れやすくなるため、水分子の束縛と塗膜の耐汚染性の両立がポイントである。
アレスシックイは主にアクリルエマルション、体質顔料、チタン白、消石灰を原材料とする古来の漆喰を塗料化したものです。
構成成分の消石灰はさまざまな特性を有しており、特に水分に溶解することで強アルカリ性を示します。更に塗膜は多数の細孔を有します。そのため、通常の塗膜に比べて表面積が大きくなります。これにより酸性臭気成分を消臭する効果を有する他、ウイルスを含む飛沫がアレスシックイに付着すると、その消石灰による強アルカリ性の効果でウイルスを構成するスパイクというたんぱく質が変質し、動物細胞内に侵入ができなくなります。すなわち、アレスシックイに接触したウイルスは感染力を失うこととなります。 菌に対しても同様で強アルカリ環境下で増殖できる菌種は極僅かとされており、抗菌性も有することが確認されています。
さらに、アルカリ性と表面の細孔形状の効果により、特に酸性の臭いに対し、優れた消臭力を発揮します。
微生物固定化担体「KPパール」「BELパール」は塗料のコア技術である“樹脂合成”“光硬化”技術を用いて開発された生物親和性の高い含水ゲルポリマーで、微生物や酵素を高度利用するための担体として期待される材料です。
排水処理分野では、担体表面に有用微生物を高濃度に付着させる結合固定化担体「KPパール」は浄化能力を大幅に向上させることができる投入型流動担体として20年の実績を持っています。特に「設備のコンパクト化」や「難分解物質の生物処理」に特徴を有しています。
一方で、包括固定化担体「BELパール」は微生物、酵素を内包することができ、微生物・酵素の繰り返し利用が可能になります。微生物や酵素がもつ力を最大限に活用したバイオマス由来の有用物質生産の生産性向上に貢献できる材料です。
親水性かつ撥油性を併せもつ特殊な表面処理剤を適用することにより、塗膜コーティング表面は乾燥時は撥油の効果により油分を付きにくくし、水洗浄時は親水の効果により付着した油分が落としやすくなります。例えば、浴室の汚れは身体からでる皮脂汚れ(油分)が主な原因となっており、適切な親水・撥油性を達成するための親水撥油剤の調整や、親水撥油性を発揮するための塗膜設計技術により、水洗浄のみで皮脂汚れを除去することができます。
エアコンには空気を冷やしたり、温めたりするための熱交換器が組み込まれており、それはアルミニウムフィンで構成されています。高温多湿の空気を冷やす際、空気中の水分がアルミニウムフィン表面上で凝縮され、水滴がアルミフィン間でブリッジし、冷房効率が落ちてしまいます。それを防止するために、アルミフィン表面を親水化する親水化処理剤が塗装されています。一般に親水化処理剤は塗膜自身の親水性に加え、あえて表面を凹凸化させる組成とし超親水性にしますが、当社は室外機に用いる親水化処理剤の表面凹凸を分子レベルまで平滑化し、親水性と滑水性を併せ持つ親水化処理剤を開発しました。
これにより、室外機のエネルギー消費が約16%削減できることが示されています。
製品を汚染から守ることは、塗料の重要な役割の一つである。当社の開発した低汚染塗料は水や油をはじき、汚染が付着しても固着せず、これが容易に除去できるように設計されている。
汚染を容易に除去するために重要なことは、塗膜の表面エネルギーを下げて汚染物質が付着しないようにすること、付着した汚染物質が塗膜内部に浸透しないことが重要である。我々はこの課題に対して、基体樹脂を有機無機ナノコンポジット材料として一般的な有機樹脂では実現できないレベルまで架橋密度を高め、その表面にシリコーン系材料を固定化させることでこの特性を実現した。
得られた塗膜はマジックインクの浸透を防ぐことから耐落書き防止塗料、コーヒーやカレー等の食品汚染への耐性を要求されるキッチン周辺材料、虫や樹脂の易除去性が求められる自動車用塗膜等に検討されている。
酸性雨に代表される環境汚染問題から、新車に塗装された塗膜の養生・輸送中における保護が必要となった。この保護システムとして、当社は「ラップガード-F」を開発した。保護フィルムは、皮膜強度が高いため十分な保護機能を提供できる反面、塗膜表面に「損傷」や「糊残り」、「ツヤ変化」、さらには「跡付き」(塗膜と粘着剤間でおきる物質移動による塗膜表面の微小な変形)などの問題が発生し易い。なかでも「跡付き」は難しい課題であるが、当社の塗料開発で培った技術を応用し、粘着剤の組成、フィルムの弾性率、基材の熱特性、フィルムの厚さ、粘着付与剤といった要因を一つ一つ丹念に検討し解決~製品化した。また、フィルムは貼り付けてから時間が経過すると接着強度が上がり、剥がれにくくなる傾向があるが、当社品は長期間にわたり剥離強度が変化せず、役目を終えた保護フィルムの処理も容易な設計となっている。
リチウムイオン電池の電極は活物質、導電助剤、バインダーの各粒子体から構成されている。その製造法は塗料と類似性があり、まず各粒子を適切に分散したスラリー液を調整し、その液を金属板へ塗装する工程を採用している。この内、導電助剤であるカーボンは電極膜全体の導電性に関わるため、適切な分散状態を形成する必要がある。そこで我々は塗料の顔料分散技術に着目し、導電カーボンの分散制御とそれに伴う電池性状の向上を図った。
塗料メーカが得意とする分散剤の開発と分散条件の最適化を行い、導電カーボンが凝集なく膜中で適切に連鎖している状態を達成した。この結果として、最終的な電池性能の向上も図れ、現在、市販のハイブリッドカーに実装されている。
非導電体である自動車用バンパーなどの樹脂成型品に静電塗装するための導電性プライマーを提供します。黒色および白色導電顔料の適用が可能であり、低明度から高明度までのカラーラインナップを有しています。
そのため、有彩色からホワイトパール色まで、ほぼすべての上塗り塗料の静電塗装が可能となり、塗着効率の向上やブースフィルターなど廃棄物の削減に貢献できます。
速硬化型のエポキシ粉体塗料を厚膜塗装することにより電気絶縁性の高い塗膜を形成し、電子部品の保護や感電防止の役割りを果たします。変電設備などの配電盤において、大容量の電流を流すための電極(バスバー)や自動車部品、家電製品等の高い耐電性が求められる部品各種に適用されます。
機能性コーティングの一つである導電性膜形成において、一つの粒子で長距離の導電パスを形成できる導電性繊維粒子は高い導電性を発現できます。カーボンナノチューブ(CNT)は極めて良好な導電材として今後期待される材料です。一方で、高アスペクト比を持つ繊維状粒子でかつ不活性な表面を持つCNTは、液中において凝集を形成しやすい材料です。そこで、当社では、繊維を長く保ちつつ、適切な分散状態を形成・維持するため、顔料表面特性・分散剤の特性・計算科学を用いた吸着特性予測・分散方法、さまざまな塗料技術を複合して、導電性の高いCNTのスラリーを開発していしています。応用分野として、透明(白色)導電膜、電池、熱伝導膜等が広がっています。
カララントはあらゆる塗料に混和し得る色材顔料の濃厚スラリーである。凝集体で供給される顔料はそのまま塗料に混合しても着色しないため、適切な粒子サイズに分散し、加工されたスラリーにする必要がある。このスラリー化において「顔料の特性に応じた適切な分散剤の配合処方」および「目的の粒子サイズに調整できる分散処方」の面で独自の技術を適用している。これらを基に市場性を有する機能性スラリーとして開発されたカンサイアクアカラーを展開しており、色安定性、沈降安定性といったスラリーに求められる機能に加え、高い耐候性といった塗料に求められる機能を併せ持っている。
塗膜を極限まで薄くすることを可能にする塗料技術によって、塗料中に含まれるアルミフレーク顔料を強制配列させ、究極の金属調意匠を達成しています。自動車フォルムをはっきりと際立たせることができる陰影感と反射強度の強さが特徴のカラーであり、自動車外板塗装用としては世界No.1とも言えるシルバーカラーを提供しています。
鉄道車両のデザイントレンドは、流線型で曲線的なデザインに移行しています。これに伴い、鉄道車両の外板色においても自動車外板色のような立体的な質感を求められています。更に地域のイメージ色や視認性、安全性を考慮した高彩度な色も必要となります。「立体感」と「高彩度」を両立した高意匠の表現手法は、難度の高い3コートパール塗装工程の適用が条件になります。
意匠層①は高彩度イエローを担保、意匠層②は透明性の高いパール光輝材の適応で立体感を表現し、下地の高彩度イエローを濁すことなくキラキラと輝く高意匠が達成できました。このカラーデザイン技術は、宇都宮市、芳賀町、宇都宮ライトレール株式会社、GKデザイングループより未来型交通インフラによる持続可能な街づくりで、グッドデザインアワード2023特別賞を受賞した芳賀・宇都宮LRT(ライトレールトランジット)に採用され、街を彩っています。
電子機器に搭載されるプリント配線基板の回路形成技術の1つとして、電着型フォトレジストがあります。電着型フォトレジストは、自動車車体の防錆塗装などに使用されている電着塗装の特性を応用したエッチングレジストであり、その特徴は、基板のスルーホールの内部や複雑な形状面、導体のハンドリング傷にも均一なレジスト膜を形成できる事にあります。 フォトレジストには、露光部が溶解するポジ型と未露光部が溶解するネガ型がありますが、当社は複雑な形状の基板でも高密度な回路形成が可能な、ポジ型電着レジスト(PEBタイプ)を得意としています。①レジストを電着~②フォトマスク~UV光照射後に③加熱(PEB:Post Exposure Bake)することで未露光部を熱架橋させ、露光部/未露光部の溶解度差を大きくすることで、④現像工程における管理幅を広げる事を実現しました。これによりドライフイルムでは形成が困難なランドレススルーホールにも対応しています。