2025.02.28 企業情報

実際の就航船データを基盤としたCO₂排出削減支援システム 「Paintソムリエ」が、日本海事協会Innovation Endorsement認証を取得

関西ペイント株式会社

 関西ペイント株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:毛利 訓士、以下、関西ペイント)グループの海洋関連事業を担っている、関西ペイントマリン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:岡 浩司、以下、関西ペイントマリン)は、2,000隻以上の就航船のバイオファウリング(※1)データを基に、CO₂排出削減支援システム「Paintソムリエ QUANTUM PASS」(以下、Paintソムリエ)を開発しました。この度、本サービスが、一般財団法人 日本海事協会(ClassNK)より、革新的な技術とサービスに対する第三者認証である「Innovation Endorsement For Products Solutions(※2)」を取得しましたので、お知らせします。


 関西ペイントは、第18次中期経営計画にてサステナビリティを主軸に経営戦略を展開する方針を打ち出しています。海運業界では、海上輸送量が継続的に増大する一方、2023年より世界の船舶を対象にした燃費実績格付制度(Carbon Intensity IndicatorCII)が導入され、所謂「運航効率の良くない」船舶は速度制限など運航での制約が増えることで輸送効率が下がる等の等事業環境の変曲点を迎えています。一部の高性能船舶はこれに対応することは難しくありませんが、世界の大多数の船舶は、この規制に迅速に対応することが難しいという実態があります。当社は、そのような大多数の船舶に対してソリューションを提供することこそが当社の果たすべき社会的役割と捉え、燃費改善措置の一つとして、長年の就航実績データに基づき、燃費改善効果の実効性が高いAF塗料(※3)を提案できるサービスを導入しました。日本海事協会の認証を取得したことで、船社と地球環境の双方にとって、持続可能な船舶運航の実現に一層貢献できることを光栄に思います。

※1:藻類やフジツボなどの海洋生物の船底への付着現象。船体の摩擦抵抗を増加・燃費性能を低下させることでCO₂排出量を増加させる原因となります。

※2:ClassNK イノベーションエンドースメント(Innovation Endorsement) : 一般財団法人 日本海事協会による海事業界の革新的技術や取り組みを第三者として認証。船舶や製品・ソリューション、プロバイダーを認証対象として展開
https://www.classnk.or.jp/hp/ja/activities/techservices/dgd2030/iea/index.html

※3:Anti Fouling塗料=藻類やフジツボの付着防止する塗料

 

 

2025年2月17日 証書授与写真
左より一般財団法人日本海事協会 技術部長 河上 淳一様、
関西ペイントマリン株式会社 常務取締役営業本部長 北 京造

 

 

開発の背景

 2018年4月、国際海事機関(IMO)において、国際海運分野からの温室効果ガス(GHG)排出量を2050年に半減・今世紀中の早い時期にゼロとする「GHG削減戦略」が採択されました。20237月の改訂時には、更に目標が格上げされ2050年頃までにGHG排出ネットゼロを目指すことが決定したことで、海運業界ではCO₂排出削減に向けた規制が厳格化しつつあります。これを受け、日本政府および日本の海運業界は2050年までに国際海運からの温室効果ガス排出ネットゼロ(※4)を目指すことを発表しています。

 この一環で、5,000GT(=Gross Ton)以上の国際航海を行う大型船舶を対象とする燃費実績格付制度(Carbon Intensity IndicatorCII)が2023年より導入され、事業環境は大きな変曲点に差し掛かっています。燃費実績を基にAEまでの5段階で格付評価され、格付けの低い船舶は、改善計画の作成が義務付けられ、評価次第ではエンジン出力を抑えて航行するなどの対策が必要となるため、運行計画にさらなる制約が生じる可能性が考えられます。

 海運業界では、代替燃料への転換、風力推進補助技術、空気潤滑システム、低摩擦船底塗料、船体形状の最適化、データ解析による運航最適化など、さまざまな脱炭素技術の導入が進められています。このデータ解析による運航最適化という切口において、当社は長年にわたって主力製品の提供を通じて蓄積することができた就航船のバイオファウリングデータを保有していたことが大きな違いで、これらを組み合わせることで、より燃費改善効果の実効性が高い塗料選定が可能となり、結果としてCO₂排出削減により効果的であることに着目しました。


※4:温室効果ガスの排出量と温室効果ガスの除去量が一定期間において均衡している状態

 

 

 

Paintソムリエイメージ図

Paintソムリエ概要と特徴

 本システムは、船舶自動識別装置(Automatic Identification SystemAIS)の就航プロファイル分析、顧客と連携して構築した独自の推進性能解析データ、関西ペイントマリンが収集・蓄積した就航船バイオファウリングデータ、の3点を組み合わせた統合的なプラットフォームです。本システムを活用することで、バイオファウリングの予測、CO₂排出量や燃費実績のシミュレーションやモニタリング検証が可能となるだけでなく、顧客の船舶仕様、就航航路などの細かいニーズに合わせた最適な塗料の提案が可能になります。202412月時点で2,000隻以上の船舶に関するデータを有し、分析・モニタリングをしており、実際の就航データに基づく分析システムを提供する取り組みは、業界でも珍しい革新的な取り組みです。

 

 

機能詳細

【就航プロファイル分析】 

  船舶の詳細就航プロファイルのAIS情報などを収集して分析し、就航率・平均船速・平均気温・航路などの特徴を可視化します。

【バイオファウリングデータに基づく解析】 

  就航プロファイル分析結果を用いて、塗装仕様候補ごとにバイオファウリングデータベースに基づいて解析します。統計的に予想されるバイオファウリングスコア・船速の低下率・燃費の悪化率を比較します。

【推進性能解析】 

  お客さまのご要望により、過去の就航ログおよび出渠後の就航ログを用いた推進性能解析を実施します。この解析結果は、燃費実績(Carbon Intensity IndicatorCII)シミュレーションに活用可能です。さらに生物付着管理における性能モニタリングも可能です。

CIIシミュレーション・CIIモニタリング】 

  バイオファウリングデータベース・就航プロファイル分析に高頻度でサンプリングされた就航データを活用した推進性能解析結果から、CIIシミュレーションを行います。同時に実際の燃料消費量と航海距離からCIIモニタリングを実施し、CO₂排出状況の把握に役立てます。

 

 

■関西ペイントマリン会社概要

会社名 : 関西ペイントマリン株式会社

所在地 : 東京都港区港南2丁目16-2 太陽生命品川ビル9F

代表者 : 代表取締役社長 岡 浩司

設立  : 2001101

事業内容: 各種船舶塗料の開発・製造・販売、漁網防汚剤等海洋関連製品の開発・製造・販売、電力施設取水口等の防汚塗料の開発・製造・販売

URL  : https://www.kp-marine.co.jp/

 

 

 

本件に関するお問い合わせ先

関西ペイント株式会社
経営企画本部  IR・広報部(今安)
E-mail:koho@als.kansai.co.jp