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生活彩土

達人インタビュー
文楽人形細工師・菱田雅之さん

「千年持つ」といわれる自然素材で頭を塗り上げる。

人形の材料となる木は、主に、檜、桐、桜、樫、椎。それぞれを部位に合わせて使い分けます。1つの頭を彫るのに、菱田さんで約2日。ノミ一本で1万2000回ほど突いて彫り上げます。塗料は、ハマグリを砕いてできる自然素材、「胡粉(ごふん)」がベース。扱える職人は国内でもごくわずかだそう。「塗り方次第では、千年色褪せないといわれています。他にも酸化鉄や砥粉、藍などを混ぜ合わせて、人形のキャラクターに合わせて色を調合していくわけです。

菱田さんが最も集中するというのが、眉や目、口を描く毛描き(けがき)、目元や眉間に影を入れる気負い(きおい)という作業。菱田さんが真髄と話す「性根」を表現するには欠かせない工程であり、わずかなズレで頭を塗りなおすことになるためです。「人形は役者ですから、舞台に立つ以上、喜怒哀楽を豊かに表現できなければいけませんが、武将と娘とでは喜び方が違いますよね。性根を理解すれば、おのずと描き方が変わります」。

たとえば、文七という武将役に使われる頭の性根は、「苦悩」。武将は、喜怒哀楽を表に出さず常に思案する立場にあります。その苦悩を表現するために、眉間には皺を寄せますが、シーンに合わせて見え隠れできるよう上下に動く「あおち(眉毛)」をつけ、微妙な感情の変化をつけます。そんな苦悩を基本とした性根の上に「喜び」を表す技巧が、まさに達人技。「どんな感情でも表現できるように描き、仕掛けを作る。そのためにも、はじめに作る頭は、すべてフラットで無表情とも言える顔にするんです。目玉の角度や気負いの濃淡、あおち(眉毛)の動き方…。言うなれば、「どの表情にも変えられる」状態ですね。"いかに感情を出さずに、表現するか"という感じでしょうか」。


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「秘伝の書」の公開は、あとで師匠に謝っておきます。

国立文楽劇場の人形細工師として10年間務めた後に独立し、現在は自身の工房でノミを片手に一般に向けた人形制作教室も開講。師匠から伝わる門外不出の技術も、生徒に惜しげもなく伝えているといいます。「だって、人形浄瑠璃は大阪で生まれたのに今では大阪以外の県で文化が広まっているんですよ。国立文楽劇場が、とある九州の劇場にあった戯曲を持ち帰り、約350年ぶりに公演したなんて情けない話です。これまで、伝統ばかりにとらわれて文楽を閉鎖的にしてきた結果ですね。僕は、このままでは文化が衰退してしまうと痛切に感じていて、興味がある人にはできる限り人形の作り方や知識を伝えていきたいと考えています」。

名人・大江巳之助氏の内弟子としてその技を継承し、日本を代表する文楽人形細工師としての役割を話す菱田さん。「伝統は約束事ですから、守るべきものです。でも、革新していくべきこともある。少なくとも、技術は後生大事に隠すことではないはずです。秘伝の書は僕が向こう(天国)に行ったとき、お師匠さんに謝ればなんとか許してくれるでしょう(笑)」。先人たちが築いた400年の伝統を背負いながらも、しっかりと、しかし軽やかに未来を見据えた達人の「性根」とはいかに。眉間の皺ではなく、瞳の輝き、満面の笑みに、それを垣間見たようでした。


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