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連載記事 風土を旅する 第二回 山陽 歴史漂う古道より道の近くには人が集まり、文化が生まれる。道はさまざまな形で人に影響を与え、風土をつくりだしてきた。

写真 ゆっくりと歴史に色づく港町、福山・鞆(とも)

はるか10世紀も昔、都と太宰府を結ぶため日本で初めての国道『山陽道』が整備された。そのなかほどにあったのが、今回の旅のスタート地点、広島県福山市。江戸時代には宿駅が置かれ、陸・海ともに交通の要衝として栄えた福山市は、いま広島県第二の都市として違うにぎわいを見せている。近代的な建物が並ぶ市街地に、山陽道時代の面影を残すところはあまりない。そこで、福山市内の南端に街道ではなく海道の町として栄えた、鞆という港町へ向かってみることにした。

鞆港は、豊後水道と関門海峡がぶつかり合う瀬戸内海の中心にある。東西から来た船が潮の流れが変わるのを待つ「潮待ち」「風待ち」の港町として、廻船問屋だけでなく船具屋や鍛冶屋、宿屋なども繁盛していたようだ。町内には当時の商家などが数多く残り、いまも現役そのままに使われている。黒い板壁や格子窓、少し黄ばんだ漆喰壁など、どこを切りとっても絵になる風景だ。かつて町の中心に城があったらしく、その防塞のためか町内の道は細く迷路のように入り組んでいる。

絵になるのは古い町並みだけではない。路地裏をくねくねと歩いて行くと、いきなり美しい港の風景が開けた。茜陽に光る漁港は、額縁のなかから抜け出したような美しさだ。実は、鞆港は万葉集にもその名が歌われたほどの景勝地で、琴の名曲「春の海」もここをイメージしてつくられたといわれている。福山は、全国シェア70%を誇る琴の産地でもあり、「達人インタビュー」で訪ねた藤井琴製作所でも、毎年たくさんの名器がつくられている。「春の海」といえば、正月には必ず流れる定番曲だが、ゆったりとしたメロディはいかにものどかな鞆の海にぴったりだ。これからはきっと正月を迎えるたびに、この風景を思い出すことだろう。

散策途中に少し気になる1軒があった。「潮待ち茶屋」と書かれているこの店は、重厚な店構えとは相反して洋食を出す食事処のようだ。もともとは船の櫓(ろ)をつくる船具屋だったものを当時のままに利用していて、櫓づくりの道具なども展示されているらしい。ガラス越しに見える店内は、いかにも時代物らしい風格があった。
なかも見てみたくなり、看板に書いてある夕刻の開店時間まで待ってみたのだが、残念なことに、時間がきても茶屋の扉は、開く気配を見せなかった。どうやら間が悪いことに、風も吹かず潮も動かない、潮待ちの日に訪れてしまったようだ。あるいは、せかせかしているこちらを戒めているのかもしれない。「よそからの人はせっかちだな。いっぺんに回らんでも、また来りゃええんじゃよ」。そんな声がどこからか聞こえてきそうなほど、ゆっくりした時間が似合う町だった。

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